社長味方


2017年(平成29年)

◆2月◆


【資産ゼロ】

 参議院議員121人の資産が公開された。昨年の選挙で当選したセンセイ方のものだ。このうち15人が「資産ゼロ」と報告していた。まさか選挙にお金がかかりすぎて、無一文になってしまったというわけではあるまい。あらためて報告しなければならないほどの資産は持っていないということだろう。

 

 政党が選挙費用をすべて負担してくれたり、支援者が寄付をしてくれたり、政策を支持する人々がボランティアとして手伝ってくれたりするから、お金がなくても立候補しやすいのかもしれない。2世、3世といった世襲議員が増えるなかで、裸一貫から身を起こそうとする叩き上げの候補者に魅力を感じるのも人情だ。

 

 しかし、121人中15人ものセンセイが「資産ゼロ」というのは本当だろうか。公表された資産には、家族名義のものや普通預金が含まれていないのだ。配偶者や親、子どもの名義で資産を集中させれば、報告書の上では「資産ゼロ」ということになる。財産を少なく見せるトリックが簡単に成立してしまうわけだ。

 

 これを一般の納税者がやったとしたらただではすまない。税務調査で真っ先に調べられるのは家族名義の預貯金。「預けていただけ」などと言ったところで、贈与とみなされるのがおちだ。

 

 税の公平性を確保する観点からも、センセイ方の贈与税調査は最低限必要だろう。

【介護事業者の倒産】

 2016年の介護事業者の倒産は108件で、過去最多だった15年の年間倒産件数(76件)を上回った。東京商工リサーチが発表した数字。介護報酬引き下げに加え、人手不足による賃金の高騰で小規模業者を中心に経営が立ち行かなくなっている現状が浮かび上がる。

 

 業態別の内訳では訪問介護が48件と最多。デイサービスなどが38件、有料老人ホームが11件となっている。規模別では従業員数が5人未満の小規模事業者が79件と、全体の約7割を占めた。

 

 新規事業者の苦戦も目立つ。参入5年以内の倒産は54件で全体のちょうど半数となっている。特別養護老人ホームと有料老人ホームでは負債総額10億円以上の大型倒産がそれぞれ1件あった。その影響もあり、16年の負債総額は94億600万円と、15年(63億8600万円)から大幅に増える結果となった。

 

 介護保険法は高齢社会化に対応する目的で1997年に制定され、2000年から施行された。介護を必要とする人の「尊厳を保持」し、自立した日常生活を営むことができるようにするための制度だ。

 

 しかし、その担い手である事業者が倒産してしまうようでは施設やサービスの充実は図れない。報酬の不正請求などは言語道断だが、報酬引き下げの議論はもっと慎重になされるべきだろう。

【命名権】

 命名権というのをご存知でしょうか。日本では施設の名称に企業名や商品名を冠する権利のことを指します。ネーミングライツとも呼ばれることが多いので、こちらを耳にする機会もあるでしょう。

 

 現在、プロ野球の12球団が本拠地として使用している球場でも、その多くで命名権が採用されています。セリーグは広島のマツダスタジアムだけですが、パリーグは日本ハムの本拠地である札幌ドーム以外の球場が、ネーミングライツによって企業名や商品・サービス名を冠しています。大阪の京セラドーム、福岡のヤフオクドームなどがそれです。

 

 従来から、スポーツ大会などにスポンサーの名称を冠する形での命名権ビジネスは存在していましたが、1990年代後半頃からは米国でスポーツ施設の名称に企業名を付けるビジネスが広がりました。メジャーリーグでクラシカルな新球場(ボールパーク)が数多く建設されると、地元の企業などが命名権を買い取り、抜群の宣伝効果を発揮しました。これによってネーミングライツビジネスは、ほかのスポーツ種目やヨーロッパのスポーツ界へと広がりました。

 

 日本では、2000年代前半から赤字の公共施設の管理運営費を埋め合わせる手段のひとつとして導入され、その範囲はスポーツ施設や文化施設、路面電車の停留所などにおよんでいます。地方自治法では、命名権の売却が「公有財産の処分」にあたらないとされているため、議会での議決は必要ありません。

 

 東京メトロ銀座線の「三越前駅」は、昭和7(1932)年の開業に際して、その建設費用を三越が全額負担したもので、命名権の先駆けと言えるでしょう。コンサート会場として知られる「サントリーホール」の所有者は森ビルですが、サントリー芸術財団が運営する施設のためこの名称となっています。鎌倉市の海水浴場3カ所の命名権を購入した「鳩サブレー」の豊島屋は、地元企業として「鎌倉の海は旧名称のままが良い」と判断、命名権を行使して「旧名称と同じ名称を付けた」形をとっています。2003年に味の素が東京都から命名権を取得した調布市の東京スタジアムは、今日では「味スタ」の略称で定着しています。サッカーのJリーグはタイトルパートナーの社名を冠して2018年までの4年間「明治安田生命Jリーグ」となっています。

 

 契約の満了や変更によって、施設の名称が短い期間でコロコロと変わることを問題視する意見もあります。米国では20年などの長期契約が基本です。インボイス、グッドウィル、プリンスと短命の名称が続いた西武ドームは3月から5年間「メットライフドーム」に。親しまれる名称として定着してほしいものです。

◆1月◆


【酉】

 2017年がはじまる。相場格言では「申酉騒ぐ」とされる酉年。申年から引き続き値動きが荒く、相場が騒がしくなるという。騒ぎに巻き込まれないように警戒するのもよし、騒ぎに乗じて利益を生み出すのもよし。いずれにしても社長さんの冷静な判断が求められる。本紙はその判断の材料となる情報をタイムリーに配信・提供していきたい。

 

 十二支のトリは当然ながら鶏や鳥を指したものだが、「酉」という漢字はもともと「酒壺」を意味したものらしい。収穫した果実から酒をつくる行為に由来した漢字だという。ならばぜひ、手塩にかけて育ててきた事業の実りを収穫し、その果実に心から酔いしれる1年としたいものだ。

 

 72年前の酉年、1945年は終戦の年。南極越冬隊がオングル島に初上陸したのは60年前。アポロ11号が人類初の月面着陸に成功したのは48年前。常用漢字が定められたのは36年前だが、「酉」の字は含まれなかった。24年前にはプロサッカー、Jリーグが開幕。JR福知山線の脱線事故は12年前のことだ。

 

 2017年は沖縄返還45周年、JRグループ発足30周年にあたる。東京スカイツリーは開業して早くも5周年を迎える。

 

 そして、日本国憲法施行70周年の年でもある。改憲勢力が圧倒的多数を占める国会。騒がしいだけの憲法論議になっていないか注視していきたい。

【痛税感】

 大型間接税の議論が始まったころ、当時の中曽根康弘首相は「羊が鳴かないように毛をむしること、それが税の極意」と発言。あとで「強権的なやり方を避ける意味だった」などと釈明したが、納税者・国民を〝もの言わぬ家畜〞扱いにしたと大問題になった。

 

 「新税はすべて悪税といわれるが、慣れてしまえばそれまでのこと、ともいわれる」。消費税導入の前年、こう語ったのは当時の竹下登首相。反対や反発があっても、実施さえしてしまえば、やがては慣れて定着する。自民党政権の歴代首相には、そんな思いがあったことだろう。

 

 「痛がらせるな」「気づかせるな」「慣れさせろ」。どれも当時は国民から大反発を食らったものだが、最近はどうだろうか。〝改革〞には「痛みが伴うものだ」とした当時の小泉純一郎首相は、それに「耐えろ」といった。民主党政権は「政治家も役人も身を切る」などと語るだけで、実行には移さなかった。そればかりか、「議論すらしない」としていた消費増税を決めた。

 

 医業経営者にとって消費税は、支払うばかりで受け取ることのない完全な〝損税〞だ。この痛みに耐えることに慣れ過ぎて「鳴かない羊」になってしまってはいけない。患者の痛みだけではなく自らの痛税感を取り除くためにも、医師は声を上げていくべきだ。